昨年は飲食店やコンビニエンスストア店員の悪ふざけによって、企業側が謝罪に追い込まれる「バイトテロ」と呼ばれるような現象が話題になった。今年は逆に消費者や業界団体からのクレームで、企業が謝罪やCM撤回に追い込まれるケースが目につくようになっている。
《ポイント》
(1)消費者からのクレームで謝罪やCMを撤回する例が増えている。
(2)その背景には企業への消費者の発言力が強くなっていることがある。
(3)企業はクレームの中から本当に深刻なものを見抜く力が必要になる。

児童養護施設を舞台にした日本テレビ系ドラマは多数の批判を受け、スポンサーが降板する事態に=共同
1月20日、全日本空輸(ANA)が放送した国際線増便のテレビCMに批判があったことから、CM放映の中止が発表された。1月23日はカエルのキャラクターが登場するキリンビールの缶チューハイのテレビCMに、未成年の飲酒を誘発しかねないという批判が出て、同じく中止を余儀なくされた。さらに1月24日はファミリーマートのフォアグラ入り弁当の発売が、消費者からのクレームによって中止になった。状況は少し違うが、日本テレビのドラマ「明日、ママがいない」は、熊本市の慈恵病院が放送中止を要請するなど多数の批判があり、スポンサーが降板する事態になった。 こうした騒動が頻発しているのには、たまたま運悪く重なっただけという見方もある。ただそうした背景には企業に対する消費者の発言力が確実に強くなっているという視点も見落とせない。 インターネットがまだ普及していなかった時代、こうしたユーザーや消費者団体等からのクレームは、短期間でこれほど話題になることはめったになかった。仮に消費者が企業にクレームの電話を大量にかけたとしても、企業側が沈黙を貫けば話題になることはなかっただろう。メディアが消費者のクレームを積極的にニュースに取り上げることも少なかったように思う。 だが昨年のバイトテロの報道に見られるように、現在ではちょっとした悪ふざけでも、ネット上で批判が集まる。ネットニュース等で炎上し始めると、マスメディアにも話題が伝わり「ニュース」になりやすい。その象徴がフジテレビの人気番組だった「ほこ×たて」だ。出演者が番組のやらせ演出を個人の[url=]ブログ[/url]で暴露したことが話題になり、打ち切りに追い込まれた。たった一人の個人のネット上での暴露でも、大きな話題になると企業側が無視できなくなる一例だ。ソーシャルメディアにおける炎上には、その起点に企業の担当者、社員、消費者の3つがあるとされる。 そのうち実は消費者起点による炎上が最も深刻で、コントロールが難しい。日本では従来、企業の担当者による炎上や社員による炎上の方が話題になることが多かった。だが米国においては多数の消費者起点での炎上の実例が存在する。 昨年のバイトテロ騒動で、消費者が企業にクレームを入れると、企業側が謝罪をするというケースが増えている。これを機に、日本でも企業が消費者のクレームを聞き入れて謝罪するという体験をしている人が多い。今後も類似のクレームは増えることはあっても減ることはないだろう。 一方で一部の極端な消費者によるクレームを起点とする炎上においては、愉快犯的なケースも多く含まれ、炎上自体が企業業績に悪影響を及ぼさないケースも多い。一部のクレーマーよりも、大多数のサイレントマジョリティーの「声なき声」の方が重要なケースも当然あるわけだ。 これから企業側に問われてくるのは、こうしたクレームが一部のクレーマーの極端な意見なのか。それとも無視してしまうと企業業績に影響を与えるような深刻なクレームなのか。まずそれらを冷静に分析した上で、素早く対応できる仕組みづくりを急ぐことが必要になるだろう。
[日経MJ2014年2月21日付]
附上原文链接:http://www.nikkei.com/article/DGXNZO67109680Q4A220C1H1EA00/
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